売れない芸人の意外な才能がYouTubeで開花! 「無駄づくり」発明家・藤原麻里菜のほどほどな生き方

売れない芸人の意外な才能がYouTubeで開花! 「無駄づくり」発明家・藤原麻里菜のほどほどな生き方


日刊サイゾー

2019/1/11 17:00

「歩くたびにおっぱいが大きくなる靴」「社会人のための会社を休む理由をランダムで生成するマシーン」などなど、発明というか工作というか……、とにかく人類の進歩にあまり役立つとは思えない「無駄」なものを作り続けているYouTuber藤原麻里菜。

2013年にYouTubeチャンネル「無駄づくり / MUDA-ZUKURI」を開設し、5年間で200
以上もの「無駄」を生み出している。

初の著書となる『無駄なことを続けるために ~ほどほどに暮らせる稼ぎ方~』(ヨシモトブックス)では、そんな活動を通じて彼女が編み出した、スターYouTuberのように数億円は稼げないけれど、「好きなこと」を続けられる程度には稼げる、ささやかなマネタイズ戦略を紹介。

同じく、食えるんだか食えないんだかよくわからない活動をしているフリーライターのボクが、「若いのにいろいろ考えてて偉いなぁ~」と感心しながら話を聞いたぞ!

■「すごく暗いけど面白い」お笑いをやりたい

――藤原さんって、どんな子どもだったんですか?

藤原 鬱屈してました。友達は目立っている子が多かったんで、一緒にカラオケ行った
り、マックでだべったりとかリア充っぽいことをしていたんですけど、家に帰ったらネッ
トで「デイリーポータルZ」とかを見て……。ネットの影響で中学の頃からサブカルも加速しちゃって。漫画も「週刊少年ジャンプ」じゃなくて「つげ義春」とか。音楽も「ORANGE RANGE(オレンジレンジ)」じゃなくて「くるり」とか「SEX PISTOLS(セックス・ピストルズ)」を聴いていました。

――ああー……。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属の芸人さんだったそうですけど、そんなサブカルっ子が、どうして芸人になろうと?

藤原 『あらびき団』(TBS系)が好きで、そこから若手芸人のライブにも行くようになったんです。テレビってキラキラした人が出ているけど、ライブだと「すごく暗いけど面白い人」もいっぱいいて。私も、心の底が暗いので、「こういうお笑いをやってみたいな」と思ったんです。で、大喜利のラジオにハガキを書いたら読まれて、「才能あるんじゃないか?」と思ったり(笑)。それで勘違いしてNSC(吉本総合芸能学院)に行った感じですね。でも入ったら入ったで、批評にさらされるわけで……。「つまらない自分」を受け止めなきゃならなくて、すぐに「お笑いやりたくない」ってなっちゃいました。

――コンビとかは組まなかったんですか?

藤原 一度組んだんですけど、私、メチャメチャ厳しくなっちゃうんですよ。自分でもイ
ヤになるくらい相方にいろいろ言っちゃって。でも、ピンになって最初のネタ見せで褒められたんで、「私、ひとりのほうがイケんじゃん」って(笑)。

――どんなネタをやっていたんですか?

藤原 往年のギャグの中に、フリーメイソンの陰謀が隠されている……みたいな、ネガテ
ィブなネタをやっていました。

――(笑)。

■YouTuber一本にしたほうが、道が開けるんじゃないか!?

――そんな頃、よしもと内で「YouTuberのオーディション」が行われたそうですけど、YouTuberなんて勝手になるもんじゃないですか?

藤原 私自身もそう思っていましたが、よしもとから経費を支援してもらいつつ、YouTuberになれる「オーディションに受かった人だけYouTuberをやっていい」という企画だったんです。5年前なんでYouTuberも今ほど知られてなかったんですけど、「何かのチャンスになれば」くらいの感じで、若手芸人はほとんど、そのオーディーションを受けていました。

――オーディションでは、どんなことを?

藤原 その場で企画を書いて、「家の中にあるものでピタゴラスイッチを作る」「商店街の婦人服屋に行って、今風のコーディネートをする」みたいなものを提出したら、「ピタ
ゴラスイッチ、いいね!」と言われて、YouTuberになれる50組に選ばれたんです。でも、工作なんてやったことないし、ピタゴラスイッチなんて作れなかったので、無駄なものを作る「無駄づくり」に方向転換しようと。

――特に工作がやりたかったわけではなく「たまたま選ばれた」だけだったんですね。

藤原 当時、お笑いをやってても全然褒められなくて……。そんな時にYouTubeで「無駄づくり」をやったら、社内での評価がよかったんです。……というのも、ほかの芸人さんはネタ動画みたいなものばっかりだったんで。

――まあ、普通はそうなりますよね。

藤原 私はヘンな工作を作る、シュールすぎる動画だったんで逆に目立って(笑)。

――最初から再生数もよかった?

藤原 初期に「再生数を伸ばすためには下ネタをやれ」って言われて、「乳首を永遠に気持
ちよくさせる装置」を作ったんです。みんなYouTubeで「乳首」って検索するんでしょうね。すぐに1,000再生くらいまで行った記憶があります。ド素人なんで、イメージしたものが全然作れないし、メチャメチャ時間もかかるし……工作するのはつらかったんですけど、だんだんと自分の中で好きなものになっていったという感じですね。

――芸人よりも「無駄づくり」のほうが向いているんじゃないかと?

藤原 私、水道橋博士の本とかを読んでいたんで、中途半端にYouTuberをやっているのが、自分の中で許せなくて……。だったら芸人をスパッと辞めて、YouTuber一本にしたほうが、道が開けるんじゃないかと。

――でも結果的に、今でもよしもとに所属しているんですよね?

藤原 偉い人に「辞めたいです」と言いに行ったら「ここは興行会社だから、芸人じゃなくてもいいんだよ。面白いことをやりたいんだったら、絶対ウチにいたほうがいいから」って言ってもらえたんです。

――YouTuber一本に絞るに当たって、何か戦略はあったんですか?

藤原 とりあえず「新しい面白いことをしよう」とは思っていました。そうなると技術が
必要になるので、電子工作の勉強もして。

――面白い工作というと「見た目を面白くする」という方向もありますけど、中身を工夫
する方向に行ったんですね。今でも、ガワはわりとガラクタみたいですし……。

藤原 そうですね、骨組みだけで(笑)。私が作る工作は、コンセプトが面白いのはもちろん、それとは別の軸で「ヘンな動きをする」という面白さも出したいと思っていて。そういう意味でも、電子工作のほうが向いていると思ったんですよね。

――工作のテーマとしては「鬱屈した感情」が大きいということですが、普段、そんな
に鬱屈してるんですか?

藤原 してますね! 「人に対してメチャメチャ嫉妬心が強い」とか「承認欲求がすごい」とか。生活している中で、格好つけている自分が嫌になったり、ダメな自分に気づいたりした時に、「無駄づくり」として昇華させるとスッキリするんです。

――「壁ドンされたいけど相手がいないから、マシーンを作った」みたいに、欲望を具現
化した工作が多いですけど、別にマシーンに壁ドンされたところで欲望は解消されないで
すよね……?

藤原 されないですね(笑)。「こういう欲望を抱えて、こんなモノを作っているヤバい女がいる」みたいなところまで含めて、ネタとしてウケれば満足です。ウケなかったら、またフラストレーションがたまりますけど。

■何か稼げる方法があるんじゃないか

――芸人をやったり、ヘンな工作をしたり、稼げるんだか稼げないんだかわからない活動
を続けてきて、今回の本のように「続けていくには、稼がないと!」という意識に目覚め
たのはいつ頃なんですか?

藤原 2年くらい前ですね。某ウェブライターさんと話す機会があって「YouTubeで、
月5,000円ぐらいしか稼げてないんです」みたいな話をしたんです。お金がない上に東京で一人暮らししてたんで、メチャメチャ借金してて。そうしたら、「俺は自分のことを面白いと思ってるし、世界中のみんなが俺の記事を待ってるって信じている。それなのに『お金がない』という理由で面白いことができなくなったら、みんなかわいそうじゃん。だから、ちゃんと稼いでいかないと!」って言われて。それでハッとしました。芸人出身なんで、稼げないことが当たり前だと思ってたんですよ。

――芸人の世界って、スターになるかバイト生活か……みたいなところがありますもんね。

藤原 だからYouTuberでも、メチャメチャ人気者にならないと稼げないと、ずっと思っていたんです。でも、何か稼げる方法があるんじゃないかと思って、ブログを一生懸命更新するようにしたら、それを見たウェブメディアの人が仕事をくれたり。Twitterのフォロワーを増やしたら、プロモーションの仕事が入ったり。そういうのがドンドンつながっていって、原稿料やプロモーションのおかげで、「無駄づくり」だけで普通に生活できるようになったんです。

――「とりあえず生き抜いて続けていく」って重要ですよね。芸人でもライターでも、長
くやってると売れるか、やめるか、死ぬか……になっちゃうんで。

藤原 やめるのは何回も考えたんですよ。続けていても、全然お金にならなかったし……。

――その時期に辞めなかった理由は?

藤原 うーん、「場所がそこしかなかった」からですかね。辞めてもほかにやることがなかったから「とりあえず『無駄づくり』やっとくか」みたいな。たとえばその頃に、いい企業から「ウチに入らない?」と言われていたら、辞めてそっちに行ってたかもしれません。

■ずーっと続けていけたら、すごくいい人生

――今回の本の企画は、よしもとから?

藤原 そうです。昨年のお正月に書いた「稼ぎ方」の記事をきっかけに声をかけてもらいました。

――この本って、「ヘンなことをやってきた人が、手の内を明かしちゃう」みたいな部分もあるじゃないですか。そこはイヤじゃなかったんですか?

藤原 メチャメチャ悩みました。こんなふざけてる人が真面目なことを書くなんて……。
「でも、本出して~しな~」と(笑)。そんな感じで引き受けたんですけど、「私、『無駄づくり』のこういうところが好きなんだ」「こういう理由で続けてるんだ」と、書けば書くほど自分のことがわかってきて、面白かったです。

――若いのにちゃんと考えてて、偉いな~と思いましたよ。今のところ「とにかく続ける」を第一にやってるわけですが、今度の展望としては?

藤原 「やめようかな」と思いながらも続けてきた結果、本を出せたり、台湾で個展をや
れたり、自分が全然想像していなかった方向に「無駄づくり」がメチャメチャ大きくなっ
てる気がして。これからも、とりあえず続けていって「無駄づくり」がもっと広がれば面白いなと思います。

――特に「コレがやりたい!」とかはない?

藤原 自分から「やりたい!」ということは少ないんですが、「無駄づくり」をやっていると時々、ヘンな依頼が来るんですよ。そういうのに一個一個丁寧に食らいついていって、ヘンなものが出来上がって、それがまた別のヘンな話につながって……みたいなことをずーっと続けていけたら、すごくいい人生なんじゃないかと思っています。
(取材・文=北村ヂン)

当記事は日刊サイゾーの提供記事です。

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